【映画】ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー

主演のチャドウィック・ボーズマンの死という宿命的な状況を背負った「ブラックパンサー」の続編は、世代交代を進めるマーベルとしては妹シュリの物語にならざるを得なかった。そこにいったん、母ラモンダの王位継承を挟んだのは、継承権として女性血族に行くためには順序として母が先という考証が絡んだのだろう。序盤では前作以上に存在感を示した「9-1-1」のアシーナ役でも活躍するアンジェラ・バセットが、あっさり倒されてしまう展開は制作側の都合でしかない。

アフリカのワカンダとカリブ海の島国ハイチをつなぐ設定にしたのは、「奴隷貿易」全盛期にアフリカから大量の奴隷がカリブや中南米に運ばれたことを意識しているのだろう。北米での人種差別に比べて、中南米では人種間の交流も進んでいた印象もあるし、米国本土にも近いのでこれからの展開をしやすくしたようにも受け取れる。ちなみに、アイアンマンにとってのジャービスのような位置づけとして登場する「Griot(グリオ)」は、西アフリカでは吟遊詩人のような役割を果たす世襲制の職業を指すが、同時にハイチ料理では豚肉を蒸して揚げた料理のこと。アフリカとハイチをつなぐ要素が、ここにも加えられていた。

ただ、それらは感覚というよりは頭で理解する内容。正直なところ、これだけ多くの説明的な要素を含む展開を161分間も見続けるのは、かなりの苦行だ。ドラマなら複数のプロットを飛び回っても楽しめるが、映画の場合はもっと本筋にフォーカスしてくれないと興味が続かないし、メッセージがぼやけてしまう。また、最近のマーベルの傾向ではあるが、若い女性のヒーローが多すぎて差別化もままならない状況に陥っているので、いざ「アベンジャーズ集合」となったときに、それぞれの設定が難しいのではないだろうか。

蛇足ではあるが、冒頭でチャドウィックの過去の映像をダイジェストにして彼への追悼を示してくれたことは、マーベルファンとしてはとてもうれしかった。