【Avi Loeb】extraterrestrial

タイトルは「地球外生命体」という意味だが、著者としてはそこにフォーカスを当てたいわけではなかったようだ。「'Oumuamua」という隕石か小惑星のような物体が太陽に接近して、急に軌道を変えて去って行ったという事実から科学的なデータに基づいて検証を行っているが、データから読み取れる形状や太陽光の反射度などから見て、地球外の文明によって作られたものではないかという仮説が述べられる。

示された事実は納得感があるが、データが限られているので検証に広がりはなく、同じことを何度も繰り返すだけに留まっているのは、この分野では致し方ないのだろう。ただ、著者が本当に言いたいのはその仮説ではなく、発想の転換ということなのだと感じた。僕の解釈ではあるが、つまりは"Think big, act agilely"ということだ。既存の常識の枠で物事を考えていては進歩は生まれない。それはコペルニクスガリレオのことを考えれば納得がいく。発想においても、リスクを取ることではじめて次のステージに進める。そのことを著者は、特に若い世代に向けて表明しているのだ。

日の当たりにくい宇宙物理学に携わる研究者として、著者は地味な研究に世間が注目して結果に賛辞を送ることの意味を説く。そして自らも、若い世代に誰かひとりが自分の研究に興味を持ち勇気づけられたら、それが喜びだとも語る。政治家を含め「目立つ人を叩く」風潮がはびこる中ではあるが、他者を賞賛することで社会が組織開発されてゆくということは、企業においても同じこと。これは、僕が大学を卒業するときの論文テーマでもあった「AGIL理論」にも通じそうだ。