【全豪オープン】ハチャノフ―西岡良仁

立ち上がりは慎重に出たハチャノフはサーブに威力を欠き、「あまりよくない」という印象のプレーだった。しかし、それはCitiオープンで敗れた西岡を研究し尽くしてのことで、力で押さずにミスを減らす作戦だったようだ。西岡が得意とする緩急の打ち分けや回転を変える戦術を先にハチャノフが取り、ラリーでも先にミスをしない。最初の2ゲームで競り負けた西岡は、ここから泥沼にハマってしまう。

2つ目のブレークを許した時点でファーストセットは捨て、セカンドセットでの切り替えを狙ったはずの西岡だが、何も変えられないままにポイントを失う。なんと20ポイントを連続して奪われてしまい、これではパニックに陥るのは必然。何をやっても裏目に出る状況が続いて、ダブルベーグルまで追い込まれた。ハチャノフは、この時点ではもう何のプレッシャーもないまま、伸び伸びとしたテニスを繰り広げる。だからこそ、西岡が流れを変えれば、一気に引き寄せられる可能性もあった。

サードセットでもブレークを許したものの、第3ゲームでジャックナイフを繰り出してブレークポイントを握ったところでポジティブなメンタルを取り戻し、ここからは攻めに行ったショットが狙い通りのプレースメントになる場面が増える。しかし、いかんせんサーブでポイントを取れないので、タイブレークにもつれ込んでしまってはやはり不利だった。

相手に合わせた戦術、メンタルの上下動、切り替えのタイミング。テニスで勝負の綾を決める要素がすべて詰まった試合だった。セカンドセットではポイントを取っただけで大歓声を浴び、自ら自虐的に観客を煽った西岡が、サードセットでは観客を熱狂させるだけのプレーを見せるのだから、本当にテニスは難しい。だからこそ、観戦する価値があるというものなのだ。アデレードのような終わり方ではなかったことが、西岡のささやかな成長なのかもしれない。