【アデレード国際1】西岡良仁―コルダ

SF第2セット序盤での途中棄権ということで、Twitterにも西岡の状態を心配する声があふれているが、これははっきり言ってプロテニスプレイヤーとしての職場放棄以外の何物でもない。タイブレーク終盤の微妙な判定に激高して、収まらないところでブレークを許したタイミングでメディカルタイムアウト。これはジョコビッチがよく使う、落ち着くための手法だろう。そして再開後には、サーブを待つ瞬間も腰を下げずにやる気なさそうな表情を浮かべ、エースを決められて棄権。土曜日の一番の楽しみにしていたこの試合で西岡に裏切られる形になってしまい、残念というより西岡に対する諦めしか感じない。

予兆は前日にあった。ポピリンとのQFでも、不利な判定に怒りを募らせ、英語で長時間わめき散らした後に、日本語で「マジ、おまえら何も考えてない」という捨て台詞を残しながら、そこからモチベーションを取り戻して勝利していた。この日も序盤から降りな判定というか、明らかに西岡のポイントなのに取ってもらえずに苦労していた。TennisTVで見る限り、前日と同じラインパーソンのように見え、チェアアンパイアこそ前日のような木で鼻を括ったような対応ではなかったが、西岡が怒るのは当然だと思う。

もともとオーストラリアには白豪主義という人種差別政策があり、今もその残滓は根強く残っていると聞く。判定に何が影響したか、何かが影響したのかはわからないが、あそこまで西岡がメンタルを乱すということは、プロテニスプレイヤーとしての根幹を揺るがされたような経緯があったのだろう。

しかしながら、その点を考慮したとしても、あの棄権はあり得ない。勝ったコルダも当惑していたし、スタンドの観客からはブーイングも聞こえたように思う。僕自身も感情が爆発してしまうタイプなのだが、それで仕事を放棄することはないし、周囲との関係を壊すような放置はしない。どんなに次世代の育成に貢献している選手でも、職場放棄するような人間を応援するのは難しいのだ。今は、もともと西岡のメンタルを課題視していたザハルカコーチがどう対応するか、そして西岡自身がSNSで何を語るかに注目している。