【ドラマ】ホット・スカル

「ペチャクチャ病」と呼ばれる伝染性の病気が蔓延するトルコの都市で、罹患を避けるためにヘッドホンを装着したり感染者を隔離したりする様子は、まさにコロナ禍の世界を思わせる。しかも、感染者が発する脈絡のない言葉の羅列を聞くことで発症してしまうために、社会のコミュニケーションが分断されてしまう。それが社会生活にどのような影響を与えるかを、この作品は語りかけているように感じた。

ただ、この設定と展開に期待して見進めると、中盤から社会運動化してしまい、ありがちな体制へのレジスタンスという要素が必要以上に強まることは残念だ。分断から統合という文脈はわからないでもないのだが、このドラマの状況でこのような運動が活発化するのは社会にとって危険でもあるはず。「民衆が正義」というステロタイプな発想は、判断が難しい状況においては必ずしも成り立つわけではないのだ。

水上飛行機を利用した脱出劇のようにイスタンブールらしさもふんだんに見せてくれるのだが、モスクが映るシーンが記憶にないのは製作サイドの意向だろうか。一方で1話ごとの長さが1時間を超える点は、この作品を味わうことの難しくしている。率直な印象としてはドラマで50分を超えると長いと感じ、1時間を超えると集中を続けることはかなり困難になる。