【ワールドカップ】イングランド―フランス

英仏対決となれば、選手の対抗意識も相当のものだったのだろう。2度先行したフランスに対し2度のPKがイングランドに与えられたが、その原因となったファウルは「なぜ、エリア内でそんな軽率なプレーをしてしまったのか」と首をかしげるようなものだった。チュアメニはせっかくのヒーローの地位を自ら捨ててしまい、テオ・エルナンデスは何の必要もないショルダーチャージ。どちらもAVRが介入したが、あの映像を見てしまえばファウルを取らざるを得なかったはずだ。

1-1のドローから、結果的に決勝点となるヘッドを叩き込んだジルーは、ベンゼマの代役と呼ぶにはもったいないほどの素晴らしい活躍。36歳の英雄は終盤には太腿の裏を気にする場面も見られたが、最後までピッチを退くことはなかった。これは延長~PK戦を睨んでの施策だとは思うが、代表としての実績を見る限り相手にプレッシャーを掛けられるFWはジルーしかいない。過密日程が続いていることを考えれば、モロッコとの準決勝ではフル出場を避けることもデシャン監督は考えるだろう。

それにしても、今大会はPKが勝負を分ける。ケインは最初こそ綺麗に決めたものの、2回目は上を狙って外してしまう。よく言われるように、クロスバーに近い部分に叩き込まれたPKを止めるのはGKにとって至難の業ではあるが、同時に今回のようなミスも起きやすい。実績と自信のあるキッカーほど犯しやすいミスに、この大事な場面でケインがハマってしまうとは勝負の綾は恐ろしい。ロリスは決してPKに強いGKではないので、ケインの自滅はフランスにとってはありがたい限りだった。