【ドラマ】グレートウォーター:ヴロツワフの大洪水

ポーランド製作のドラマだが、1997年に起きたオーデル川の氾濫を扱ったドキュメンタリー要素の強い作品。オーデル川という名称にはなじみがないかもしれないが、ポツダム宣言でドイツのポーランドの国境として定められた「オーデル・ナイセ線」は記憶になるのではないだろうか。

洪水の危機に見舞われながら、行政が大局的な判断をすることができずに、事態はますます悪化する。大都市ヴロツワフを守るために上流にあるケンタの堤防を破壊するというプランも、地元住民の体を張った抵抗で実現できない。このケンタの抵抗を主導したアンジェイは、父親がヴロツワフの病院に入院していて、自身の行動によって父親の状況が悪くなってしまう。マイケル・サンデルが提唱していた「究極の選択」のような場面が、まさにそこにあったということだ。

単に「無能な政府、無能な軍隊」ということではなく、何かを守るために何かを捨てざるを得ないという選択が迫られる。それは僕たちの生活でも普通に起こり得るし、企業の経営者や政府でも同様で、その選択が自身の利害に合致しない人から責められるということにすぎないのだ。洪水を通して、とても深いテーマを投げかけられた気がして、見応えのある全6話だった。