【ビジネス書】GE帝国盛衰史

僕が以前勤務していた会社に関する内容なので、興味を持って読んだ書籍「GE帝国盛衰史」。この本にも書かれている通りだが、僕の肌感覚でもGEの業績は間違いなく「M&A」と「攻撃的会計」に依存していたと感じる。僕が過去に勤務していた別の会社でも、期末に社員を転籍させて退職金引当を積み替えるようなことは行っていたが、GEの手法は重箱の隅をうまくつついている印象が強かった。それができるCFOやコントローラーは、重宝されたのだろう。M&Aに関しては、BDの同僚が「何か買収先のヒントはないか」と相談に来ることもあったし、DDを内製で済ます部分が大きく、部門によって精査に結構な温度差があった。実は自分も年金資産を見誤ったことがあって、まずい金額感だと思っていたのだが、ディールチームに報告した際に「その程度か」とスルーされたこともある。それらについて、経営陣にも自覚があったからこそ"Organic Growth"が叫ばれたのだと思うが、具体的にどうするかまで語られることはなく、掛け声で終わっていた。

また、これは僕がGEを離れた理由のひとつでもあるが、その分野の専門知識よりも「GEのツールをうまく回すこと」が評価される。つまり今でいう「アート思考」の対極で、思考を停止して決められたオペレーションに乗っかることが求められるということ。これは、この本にもあるように、メーカー的な発想そのものであって、キャピタル部門と対立した根源にあるものではないか。シックスシグマの"DMAIC"という考え方は、もともと"MAIC"で"M = measure"を起点にしていたところ、キャピタルの反発で"D = define"を足したという話を聞いたことがある。そう考えると、PDCAよりOODAループの方がクリエイティブな産業では妥当なサイクルなのではないかという気もしてくる。

全体的に、ジェフ・イメルト個人に負の業績を押し付けた書き方になっていて、確かに米国企業の責任権限からいえば正しいのだが、もっと事象に目を向けないと未来に生かせない。その意味では、タブロイド紙的な部分が多かった


ことは残念だ。