【映画】ピノキオ

結構毒を含んだ原作を、いい感じのエンターテイメントに仕立てたのは、さすがにディズニーの力だろうか。ピノキオは悪気のない形で悪いことをしてしまう「世間知らず」というポジショニングを与えられる一方で、登場する他のキャラクターたちは生きるために必死という時代感を纏うことで、現実味がありながらネガティブな印象に走りすぎないバランスを保っていた。

トム・ハンクスは、もともと表情やちょっとした動きで見せる名優だという印象があるが、本作でもその延長線上の演技。多くをを語るわけでも、派手なアクションがあるわけでもないのに、しっかりと存在感を残している。ピノキオというファンタジーの世界観にあって、現実世界の感覚をあそこまで違和感なく盛り込めたのは、やはりトム・ハンクスならではだ。

105分というランニングタイムなので、あっという間に終わってしまう。エピソードも削ぎ落され、無駄のない構成になってはいるのだが、そのせいでやや淡泊な記憶しか残らない。見ている間は楽しめるのだが、見終わってから何が、どの場面がよかったかと問われても、答が見つからない。そういう意味では、やはりこれはトム・ハンクスの演技をじっくり見る作品なのかもしれない。