久しぶりの第20巻も期待を裏切らない内容だった「聖☆おにいさん」。ただ、最近はイエスとブッダが脇役というかストーリーテラーというか、バラエティ番組の司会者のような位置づけになってしまっている点は気になる。今回もヨハネやルシファー、梵天、マーラといった強烈なキャラクターの個性を描くための「きっかけ出し」のような役割に終始していて、聖人コンビはあまり目立たない。
おそらく作者の中村光としては、連載開始当初にはここまで長い連載になるとは思っていなかったのだろうし、イエスとブッダについてはもう描き尽くしてしまったという思いもあるのだと思う。初期には存在感のあった立川というロケーションも、その特徴が薄れて、どの街に住んでいるのかはどうでもよくなっているような気もする。このあたりで原点に返って、初期のようなイエスとブッダの物語を見せてくれてもよいのではないだろうか。
まあ、この二人の宗教上の位置づけを考えれば、そう簡単にイジれるような存在ではないし、そもそもこのようなマンガに登場させることに批判もあるわけだから、作者としても悩ましいのであろうことは想像に難くない。そう考えると、彼らを司会のようにしてサブキャラに活躍させる展開は、次善の策としては妥当なのかもしれない。