【映画】ミラベルと魔法だらけの家

"Encanto"を「ミラベルと魔法だらけの家」という邦題にしたのは、"Frozen"を「アナと雪の女王」と同様で、ディズニーは最近すっかりこの売り方にハマってしまったようだ。日本語としてのリズムや記憶への残り方を重視しているのだろうが、原題の持つテーマの明示がぼやけてしまうのは、芸術作品としていかがなものかという疑問もある。オタク系アニメのタイトルが長くなる傾向があるが、これに引きずられているような印象すらある。

本作の序盤は、多すぎるくらいの登場人物の描写に割かれ、しかもこの手のミュージカル作品にありがちな日本語の乗りの悪さで陳腐に見えてしまう弱点に、視聴するモチベーションが下がってしまっていた。しかし、徐々に作品が訴えるテーマに寄り添い始めると深みが増し、主人公ミラベルの表情にも微妙な変化が生まれる。このあたりの「ギアの入れ方」が、さすがにディズニーのうまさだと思う。「私ときどきレッサーパンダ」と同様に、白人ではない家族を扱ってダイバーシティを見せつつ、教育的なテーマを前面に押し出す作り。押しつけがましさはあるものの、コミカルに包み込んでしまうところも、いかにもディズニーだ。

僕が一番好感を持ったのは、スペイン語のアコースティックな佳曲"Dos Oruguitas"を無理に吹き替えずに字幕で流したこと。どんなに味のあるシンガーを当てたとしても、日本語にしてしまったらあの味わいは出ない。それは、言語の持つリズムや母音の強さなどが影響してしまうからだ。あの囁くような詞と南米らしい旋律が壊されることなく、見せ場のBGMとして流れたことが最大のポイントだった。