【トニー賞】授賞式パフォーマンス

今年のトニー賞授賞式は、ブロードウェイの関係者たちが復活を祝って楽しんでいるという雰囲気が感じられ、それだけでこちらまで楽しくなってしまうような気分にさせられた。MCを務めたレスリー・オドム・ジュニアも肩の力が抜けた進行ぶりでアットホームな雰囲気。ただ、いつもより長く続いた印象の追悼コーナーではコロナ禍の影響が感じられ、あらためて世界が経験した苦難を思い起こさせる。

ティナ・ターナーを演じるエイドリアン・ウォーレンの圧巻の歌唱、イディナ・メンゼルの存在感ある声、デヴィッド・バーンのちょっととぼけたパフォーマンス、オードラ・マクドナルドの伸びのある声。どれもこれも、素晴らしかった。僕はまだブロードウェイで舞台を見たことがないのだが、ぜひ一週間くらい滞在して劇場に通いまくってみたいと、心からそう思った。リバイバル作品賞を受章した「ソルジャーズ・プレイ」のスピーチで、演出家のケニー・レオンが差別問題で命を落としたブリオナ・テイラーさんとジョージ・フロイドさんの名前を呼び、大事な部分を2度繰り返しながら重厚なメッセージを発していたことも印象的だった。

それにしても、今ニューヨークで一番ホットなのはクリストファー・ジャクソンかもしれない。先日の9.11追悼式と翌日のテニスUSオープン決勝でそれぞれ国家を歌い、今回もフィナーレに登場して美声を披露した。ドラマ「スーツ」のチャンク役の印象が強いが、もともとオフ・ブロードウェイのミュージカルでキャリアをスタートさせているだけに実力は十分。あの柔和な表情を、今のこの世の中が求めているということなのだろうか。