【TOKYO 2020】男子サッカー/日本―メキシコ

お題目ではなく、本当に金メダルを目標に戦ってきた選手たちが、銅メダルマッチに向けてモチベーションを持ち直すのは容易ではないだろう。だから僕は、三苫と大迫を起用して欲しいと思っていた。違うモチベーションで臨む選手がいれば雰囲気を変えることができるし、メキシコの準備も外れるからだ。しかし、森保監督の選択はこれまでの延長だった。

堂安と久保は疲労が溜まっている上に対策されたことで、まったくといってよいほど機能しなかった。遠藤も、体のキレがないからこそ、あの場面でPKにつながるファウルを取られてしまったのだろう。遠藤はイエローカードももらっていたので、僕ならハーフタイムで遠藤を三苫に、堂安を上田に代えて2トップにしたところだ。そのくらいのシフトチェンジがなければ、ビハインドを跳ね返せる状況ではなかったのだ。森保監督も、珍しくボランチを外して攻撃的な選手を投入していたが、バランスを崩すタイミングは遅すぎたように思う。

それよりも、僕が不満だったのはNHK実況の曽根優さんと解説の中田浩二さんだ。真剣勝負のメダルマッチで「シュートで終わったからよかった」というコメントはあり得ない。これは高校総体でもないし、長いリーグ戦の1試合ではないのだ。ここで結果を出さなければならないゲームで、過保護なコメントをしているようでは競技のレベルが上がるはずもない。愛のあるブーイングも時には必要で、この試合は間違いなくそのタイミングだったのだ。女子バレーボールの韓国戦で「ここは石川しかない」という実況で、石川が止められたのも同じこと。ファンやメディアのレベルが上がらなければ、競技のレベルは上がらない。