【TOKYO 2020】女子サッカー/日本―チリ

シュートを外す練習をしているかのような前半だった。なでしこJAPANは、彼女たちらしいていねいなパスワークでチリの守備を崩すが、フィニッシュがとにかく決まらない。裏のスペースがなく、連戦と雨で速攻の効果も限られる中、高さのないなでしこJAPANがゴールを奪う道のりは果てしなく長いようにも感じられた。その意味では、ハーフタイムに菅澤を下げ、カナダ戦でのPK失敗を挽回したい思いの強いであろう田中美南を投入したことは納得できた。

もうひとつ、この日のポイントはホンジュラス人のボルハス主審。ホンジュラスCONCACAF(北中米カリブ海連盟)なので、チリが属するCONMEBOL(南米連盟)とは異なるが、同じ旧スペイン領ということでは疑義のあるキャスティングだ。ただ、問題なのはそこではなく、彼女のスキルが極めて低いこと。ちょっとした身体接触で笛を吹き、チリ選手のオーバーリアクションにも反応してしまう。これで流れに乗れなかったところは、少なからずあるだろう。チリにしてみれば、70分のクロスバーに当たってゴールインしたようにも見えた場面を十分に確認しなかったことが不満だろうが、ビデオで見てもゴールラインをボールが完全には越えていなかったので、ノーゴールは明らかだ。

ゴールの場面は、岩渕のポストプレーから田中が狭いスペースに侵入して右足を振り抜いたもので、田中らしさが十分に表現されたゴールだった。ここまで出場していなかった宝田の起用は、僕には想定内。南との間に大きな差があるとは思えないので、グループリーグのどこかでは使ってくるだろうと思っていた。木下の交代投入は意外だったが、仕掛けという面でしっかり起用に応えるプレーを見せてくれた。次のスウェーデン戦では、塩越の高さも必要になるだろう。ここからの巻き返しに期待したい。