【TOKYO 2020】男子サッカー/日本―南アフリカ

引いた相手に手数を掛けすぎる。それは、ポゼッションとパスワークに強みを持つチームが陥りやすい罠だ。守備重視の南アフリカに対して、スペースが限られた中でも裏を狙う動きがあまり見られなかったことが、展開を難しくした要因のひとつに見えた。そんな中でも林大地は再三仕掛けていたのだが、いかんせんオフサイドにかかり過ぎた。パサーとのタイミングの問題というよりも相手DFラインとの駆け引きの問題で、DFラインを上げられたときにオフサイドエリアに残ってしまうのだ。これは林大地にとって大きな課題なので、その点も踏まえて上田や前田との比較を行うべきだ。

サイドの突破というオプションでは、サイドを抜けても中にDFの人数が揃ってしまい、まったくチャンスを作れない。相手に高さがあればなおさらなので、抜き切らずにアーリークロスという選択肢を想定しておく必要がある。インサイドからのビルドアップは遠藤航と田中碧がしっかりこなしていたので、サイドからのチャンスメイクとFWの駆け引きが次戦に向けた課題となるだろう。

久保のゴールは時間的にも絶妙だったが、やはり最後は個のスキルに依存することがよくわかる。どんなにボールを保持してパスを巧みに回しても、最後に決めるのはチームではなく個人なのだ。それが一番難しいからこそ、サッカーは他のスポーツに比べてロースコアの結果となる。その意味でも、結果を残してくれた久保建英を今日は純粋に称えよう。

それにしても、この試合の主審はレベルが低かった。ファウルの見極めにムラがあり、ダイビングや必要以上の過剰な声やアクションに左右されていた。それ以上に問題が大きかったのはポジショニングで、パスコースに立ちはだかったりセットプレーで重要なエリアに立っていたりと、サッカーをわかっていないのではないかと思うような印象すらあった。ただ、これは八百長とか身びいきということではなく、単純にスキル不足なのだと思う。やたら笛を吹いていたのも、自分が暑さで走り続けるのが辛いから止めたかったのではないだろうか。