【TOKYO 2020】ソフトボール/日本―メキシコ

宇津木監督の継投ミスだった。レジェンド上野は今日が39歳の誕生日ということもあって、完投させて勝利をグラウンド上で見届けさせたかったのだろうとは思う。しかし、7回のマウンドに上がった上野の制球は明らかに乱れていた。思ったようにスナップを利かせられず、先頭打者へのボールが高めにすっぽ抜ける。そんな危険な状況だったにも関わらず、宇津木監督はマウンドに出向いただけで交代させなかった。

その結果として招いたピンチに、センター山田が痛恨の落球。あのフライの処理はグラブを下から持ってゆくべきで、上から被せてしまったがためにエラーになった。同点に追いつかれて、さらにランナーを背負った場面で登場した後藤のピッチングは、しかし「無双」と言ってよいほど神がかっていた。タイブレークでは1点は入るものだという想定が必要だが、無死2・3塁の場面からインコースへの強気の投球で3三振を奪う。日本の攻撃がそうだったように、ランナーを3塁に遅れれば内野ゴロでも点が入るところ、6つのアウトのうち5つを三振という理想的な形で試合をクローズさせた後藤の技術と気迫には敬意を表するしかない。

メキシコのプレーも素晴らしかった。先発オトゥールの緩急をつけた投球も見事だったが、ウルテスのホームランも絵に描いたようなダウンスイングによるもので、基本に忠実なところを見せてくれた。女子サッカーのカナダもそうだったが、チームを盛り上げようとする意識も高く、ストイックな日本とは対照的に見えた。こんなご時世とはいえ、ポジティブなメンタルを持ち続けるには雰囲気づくりも大切だ。