【EURO2020決勝】イタリア―イングランド

PK戦のキッカーには、2通りの考え方がある。競り合って終盤にヤマが来ると考えるか、早めに差をつけて突き放すかのどちらかだ。ガレス・サウスゲートの選択は後者だったのだろう。主軸のケインとマグワイヤに続いて、延長タイムアップ直前に投入した2人を蹴らせ、最後はこれからのイングランドを担う新星サカに委ねた。しかし、これだけ大きな大会の、それも決勝で、ピッチに入ってすぐにPKを蹴るプレッシャーは小さくないはず。プレーがそれだけだということは、迷うポイントがそこしかないのだ。そして19歳のサカに至っては、直前にイタリアのPK職人ジョルジーニョが失敗しているだけに、ドンナルンマとの駆け引きも重要だったはず。どう考えてもイングランドは、この5人のオーダーに間違いがあった。

それにしても、ルーク・ショーの先制点は見事だった。ここしかないニアポストとGKの隙間に計ったように、しかしながら力強く蹴り込んでの先制点だ。イングランドは引き気味になり、イタリアがこじ開けるのは難しいと思われたが、ボヌッチが魅せた。先日は乱入したファンと間違われるといううれしくないイベントがあった彼だが、ゴール前での執念を見せてこぼれ球を叩き込んだ。どちらのゴールも、迫力もテクニックも兼ね備えたもので、決勝にふさわしいものだった。

PK戦の多さとVARによる判定変更、集中開催でないフォーマットなど違和感が拭えない大会だった。準決勝と決勝がウェンブリー開催で、全体的にイングランド有利なスケジュールだったことも批判の対象になっている。まあ、サッカーに世界では昔からそんなものなのだが、あまり進歩していない部分と進歩がなじんでいない部分が共存しているようだ。

今大会の裏では、グリズマンとデンベレが過去の過ちを糾弾されている。日本人としては気分の良いものではないが、そもそも4年前のグリズマンは垢抜けない選手だった。それがEUROでの活躍から雰囲気が変わり、すっかり貴公子然としたスタイルになってしまった。あの愚行も、さもありなんというところだ。