【なでしこJAPAN】日本―メキシコ

結果だけ見れば快勝だが、後半の展開には気になるところがある。後半開始早々の田中美南のゴールの後に1点を返されたあたりから、試合がルーズな雰囲気になってしまったことだ。なでしこJAPANはイケイケになり、籾木、木下、遠藤とゴールを重ねる。本来はサイドアタッカーである遠藤純が、ゴール前中央のポジションでゴールを決めたのは驚いた。ウクライナ戦での塩越のゴールと合わせて考えると、停滞していた若い世代の底上げに兆しが見えてきたと言えそうだ。

オリンピックでは、恐らく引いて守ってくる相手は多いだろう。その意味では、この時期にイケイケモードになることも悪くはないのだが、引いて守る相手を崩すシミュレーションをしておくべきではなかったか。このメキシコ戦では相手を崩せていたが、それはメキシコが守りを固めては来なかったからだ。清水がサイドを駆け上がって裏へ抜けた場面は、守備を固める相手にも有効だろう。ショートパスをつないで岩渕がポストになった場面も、使えるオプションにはなる。しかし、相手の守備の強度は、今日のようなレベルではないはずなのだ。

前回のワールドカップでもそうだったが、守備を固められたときにチャンスを作れても、フィニッシュの精度が重要になる。籾木は、それが痛いほどわかっているはずだ。今日の大勝で浮かれてはならないし、「いつでも点は取れる」と思っていると足元をすくわれる。慎重に、そしてスイッチを入れるべき場面では大胆に。そんな采配を高倉麻子監督に求めたい。