【全豪オープン】シンネル―シャポバロフ

久しぶりに、テニスを楽しませてもらった試合だった。若手の星と称されるシンネルとシャポバロフの対戦は、才能と意地がぶつかり合った。ファーストセットはシンネルが、うまさと強さと深さで圧倒した。とにかくプレースメントが深く、ベースラインに止まらざるを得ないテニスには恐ろしいほどの凄みが感じられた。

しかし、セカンドセットにシャポバロフが盛り返す。その原動力は、この相手には負けたくないという気持ちだったように見えた。淡々とプレーするシンネルに対し、気持ちを剥き出しにして吠える。もちろん、それだけでポイントが取れるはずもないのだが、気持ちの乗り移ったテニスは見ていて気持ちがよい。

サードセットは、そのままの流れでシャポバロフが奪い、このまま行ってしまうような予感もあった。ところがフォースセットに入ると、シンネルのうまくて深いショットが再び顔を覗かせる。そして、まさかのファイナルセット。この時点でトレーナーを呼んでいたのはシャポバロフだったが、シンネルの足の方が厳しい状態になっていたようだ。シンネルが足をさする仕草を見せれば、シャポバロフは相手を走らせるプレーに出ていたので、迂闊に弱みを見せたくなかったのかもしれない。

いずれにせよ、観客がシンネルびいきになっている中、自分を盛り立てながら勝ち切ったシャポバロフには賛辞を贈りたい。そして、シンネルもスタミナと集中力の維持ができれば、誰と当たっても勝てそうだ。コロナ禍の中で、こんな素晴らしいテニスを堪能させてくれたことに感謝しよう。僕の中では、楽天オープンのスティーブ・ジョンソンとティエムという対戦に並ぶ、ベストのひとつに入る試合だった。