【ドラマ】マーキュリー・セブン

Disney+で配信されているこのドラマは「マーキュリー・セブン」という邦題のせいで気づかなかったが、原題は「The Right Stuff」で1983年に映画化されたものと同じ題材を扱っている。どちらも原題に「正しい資質」ように、宇宙飛行士になる資質は何なのかというテーマで物語が展開する。映画版では、音速を超えた初のテストパイロットだったものの大卒でないという理由で候補者になれなかったチャック・イェーガーをベースに話が組み立てられるが、ドラマ版では候補者7人が「最初の宇宙飛行士」を目指して切磋琢磨し、時には足を引っ張りあう場面も描く。

実際に最初に無重力を経験するアラン・シェパードは不倫の場面を新聞記者に撮影されてしまう一方で、ジョン・グレンは政治家や上層部に働きかけて仲間の悪事をもみ消すという正義感の強いリーダーで、敬虔なクリスチャンでもある。しかし、現場の評価はシェパードの方が高く、グレンには納得がいかない。真のリーダーに求められるものは、おそらく絶対的なものではなく、その振る舞いをいかに周囲に見せるかということで、いわゆる「自信」が占める部分も大きいと僕は思っている。ちなみに自分もグレンのような正義感の強さがあるのだが、足を引っ張ることはしない。それが潔くないと思うからだ。グレンは敬虔な宗教心があるからこそ、自分の中の正義を譲れないのではないだろうか。

同じことは、候補者のひとりゴードン・クーパーにもいえる。クーパーは記者会見の場で、同じように宇宙飛行士を目指そうとする妻を茶化してしまう。本人は場の流れに乗ってしまってウケを狙っただけなのだが、それで妻は子供を連れて出てゆく。これも、周囲への見え方、伝え方という問題だ。仕事をしていても感じるが、どんなに正しい行為でも、それを適切に表現して伝えないと意味がない。それこそが「The Right Stuff」の意味するところだと、僕は受け止めている。