【岩波新書】アメリカ大統領選

トランプとバイデンの熾烈な争いは収まりつつあり、CNNのニュースネタもすっかりCOVID-19に塗り替えられたこの頃だが、ドキュメンタリーやドラマ「ハウス・オブ・カード」を見ているので米国の政治に興味を持った。それで読み始めたこの新書は朝日新聞の記者によるものなので、間違いなく民主党に肩入れしているであろう部分を意識して割り引いた。

久保文明と金成隆一という二人が分担して書いているため、文体の違いも明らか。序盤と終盤の久保の文章は妙に理屈っぽく、小難しい言葉をこねくり回して書いている節があるので、読み進めるのに難儀する。一方、金成の文章はライブ感が満載で、大統領候補の選挙キャンペーンが目の前で展開されているかのような感覚が伝わってくる。予備選から本選に至るまでが描かれ、党大会やスーパーチューズデーなど何となくしか理解できていなかった部分が実感を持って見えてきた。

数年前にあった地元の区長選挙で、対立候補ネガティブキャンペーンに終始して落選した候補がいて、僕としては気分が悪かったのだが、米国の選挙もこれに輪をかけたような展開のようだ。選挙費用が高騰し、それをテレビCMに費やす。そして、資金集めの集会を開くことで献金を募る。このあたりはなかなか日本の庶民感覚では実感しにくいのだが、日本も同じ方向に向かっているのかもしれない。ちなみに、その区長候補は落選したのだが、すぐに参議院選に出馬して当選してしまった。これも、選挙の綾というものなのだろう。