【映画】ドクター・スリープ

スタンリー・キューブリック監督、ジャック・ニコルソン主演の名作「シャイニング」の40年度を描いた作品ということで、WOWOWの仕込み通り「シャイニング」を見直してから観賞してみた。全般的な感想としては、この作品に何を求めるかによって、大きく評価が分かれるのではないだろうか。

僕は前作の張り詰めた緊張感が好きだったので、その延長戦上にあるものとして見たのだが、前作へのオマージュは十分すぎるほどに感じるものの、緊張感はあまり感じることもなく、バトル要素が強すぎたように思う。浴室の老女は出過ぎだし、双子の少女は終盤の登場ではあまりにキャラが違っていて失笑してしまうほど。ジャック・ニコルソンの"I'm home!"という場面をなぞった部分こそテンションが上がったが、物足りなさは否めなかった。それは、映像技術の精度が高すぎたせいかもしれない。都会の照明が妖怪の暗躍するはずの闇を奪ったように、CG技術が古き良きRPGに必要だった想像力を失わせたように、映像の美しさは本来の視力や視界とは異なる世界を見せてしまう。

いっそのこと、もっと振り切ってアクションゲームばりのストーリーにしてしまうという選択肢もあったのではないかと思うが、そこは前作ファンも取り込みたいという製作側の色気なのだろう。個人的には、この作品をデイビッド・リンチに撮らせたら、また一味も二味も違う世界観を堪能できたのではないかと思った。ツイン・ピークス的な歪んだ空間に再現される「オーバールック・ホテル」も見てみたい。