【USオープン】2つの男子決勝

USオープンの男子決勝はもつれにもつれ、ドミニク・ティエムがオープン化以降初めてとなる2セットダウンからの優勝を果たし、それはまたターブレークで決まった初めての優勝でもあった。劇的な展開といえなくもないのだが、内容を見てしまうともう少し評価を下げたくなるようなものだった。サシャ・ズベレフのサーブはとんでもない方向に飛び、ダブルフォルトも連発。無用にネットに出てはティエムのパッシングショットを呼ぶ。そのティエムも冴えないプレーで波に乗れない。試合が終わってからセレモニーまでの時間は、ティエムが笑い転げズベレフが落ち込むという、この試合を象徴するかのような様子だった。

一方の車いす男子決勝は、素晴らしい内容だった。国枝慎吾とヒュウェットは、ともに力の限りを発揮し尽くしていた。車いすを巧みに操って厳しいところに打ち合うラリーが続き、ふたりとも勝利への執念がにじみ出ていた。国枝はファイナルセットでラインパーソンに行く手を阻まれてしまうシーンがあったが、実に悔しそうな雄叫びを上げていたのが印象的だった。

車いすテニスは競技人口も少なく、USオープンでも128ドローの健常者テニスに比べて8ドローしかなく、トップ選手の顔ぶれはほぼ変わらない。だから、グランドスラム大会での優勝回数だけで国枝を称賛することは、個人的にはあまり好きではない。しかし、今日のような素晴らしいテニスで見る者を感動させてくれるのは間違いなく、その意味で国枝は疑うことなくレジェンドなのだ。