【人事の話】ハラスメントと失言

セクハラにしてもパワハラにしても法令でそれなりに基準があるので、どんな行為が違法なのかはある程度明確になっている。ただ、問題はその「程度」と「頻度」で判断が異なること。つまり、個々の言動がハラスメント行為に該当したとしても、それをもってただちに「違法行為」とは言えないし、損害賠償や慰謝料の対象になるわけではないということだ。

政治家の失言でも似たようなことがあるが、それ自体はコンプライアンスに触れる不適切な発言だったとしても、だからといって例えば一度きりの言動だったら、それで「辞任要求」が巻き起こっても世論は流されない。ハラスメントの裁判で、一度きりの言動によってハラスメント認定される可能性が低いことと同じだ。

つまり、そこには「不適切かどうか」と「それによって処罰対象となるかどうか」というふたつの基準があって、その間にあるものが非常に多いということなのだ。「不適切な発言だが、処罰対象とまではいえない」ということだ。ちょっとしたことで「辞任要求」することは、論点をすり替えてしまうのに等しい。本当に大事なのは「辞任させるかどうか/するかどうか」ではなく、その言動が「不適切かどうか」なのだ。