【コミック】さよなら私のクラマー(12)

当初は「キャラの描き分けはうまくないけど、ボールの軌跡などサッカーの描写が見事」という評価だった新川直司のこの作品だったが、最近はキャラが立ってわかりやすくなった反面、ゲームの描写に凝りすぎてかえってわかりにくくなってきた。引きの大画面で見せてくれるのは迫力満点なのだが、その絵の中でパスを誰が出して誰が受けたのか、あるいは受けようとしているのかがよくわからない。想像力を働かせるしかないのだ。

ストーリーは、ワラビーズだけにとどまらず対戦相手の物語まで描かれるので、深みが増している。ワラビーズにしても、越前や田勢、加古川などの脇役にもスポットライトが当たるようになり、ようやくチームの輪郭がはっきりしてきたところだ。逆に、周防のように露出が減ってしまったキャラもいるが、また主役的な扱いをしてくれるのを待とう。

ここまで来ても、タイトルの「クラマー」については何も語られていない。デッドマール・クラマーのことなのか、それとも実はまるで違う伏線なのか、それだけでも引っ張れるネタになっている。そろそろヒントが出てきてもよさそうだが…