【映画】ロケットマン

つい先日「マンマミーア! ヒア・ウィー・ゴー!」を酷評する記事を書いたばかりだが、僕がミュージカル映画に求めるものは、この「ロケットマン」にあった。すべての違いは楽曲の位置づけだ。「マンマミーア~」では曲ありきで、使うABBAの楽曲が決められた上でのシナリオだったのではないか。そいれに対し、この「ロケットマン」は台詞やストーリーの一部がミュージカル仕立てになっているという構成で、まったく違和感がなかった。

そもそもミュージカルの良さは、単なる台詞では伝わらないメッセージを歌やメロディに乗せられるところ。ストーリーにアクセントを与えるものであるはずなのに、「マンマミーア~」ではマイナスの効果しかもたらしていなかった。そのあたりは、ティム・ライスと組んでミュージカルも手掛けるエルトン・ジョン本人がエグゼキュティブ・プロデューサーを務めていることも、大いに影響しているだろう。

主演のタロン・エガートンエルトン・ジョンの尖った個性をかなりまろやかにした演技と演出だったが、過度に似せることにこだわらなかったことも良かったのだろう。歌唱力もイマイチだったが、それでも作品を見終わったときの満足感を下げるようなものではなかった。エルトンをエルトンたらしめたものは何だったのか、それにフォーカスを当てることで、余分なものを削ぎ取ってストーリーがわかりやすくなった。

ちなみに、この作品を見て、すかさずiTunesで「Goodbye Yellow Brick Road」とキキ・ディーとのデュエット「Don't Go Breaking My Heart」をダウンロードしてしまった… 僕にとっては、この2曲こそがエルトン・ジョンなのだ。