【映画】エール!

「エール!」はいかにもフランス映画。聴覚障害の家族の中で唯一障害のない娘が、家族とのしがらみを捨てるかのように声楽のオーディションに臨むストーリーだ。パリ近郊と思われる田舎で牧場を手伝いつつ、乳製品をマーケットで売り、学校に通うという多忙な生活を送る様子をルアンヌ・エメラが好演している。町長に立候補してしまう父親も手話ながら「おしゃべり」な印象の母親も、一癖も二癖もあって、味のある演技だ。

装置やロケに予算をつぎ込むのではなく、しゃれた台詞と表情でメッセージを伝える作りは日本映画にも通じるが、それこそがフランスらしさだと思っている。聴覚障害をあまりシリアスにとらえずに、それでいて差別している感じもしないのは絶妙のバランス感覚なのではないだろうか。

オーディションの場で家族に向けて手話つきで歌うシーンがクライマックスだが、これは感動モノだった。ややネタバレ気味になってしまったが、意外な展開で見せる作品ではないので問題なく楽しめるだろう。