【映画】ラブソングができるまで

映画「ラブソングができるまで」は、ヒュー・グラントドリュー・バリモアの演技だけでお腹いっぱいになる佳作だ。往年のポップスターを演じるヒュー・グラントのとぼけた台詞や歌唱、そして踊りは、いかにも昔のヒット曲で食いつなぐドサ回りの売れない歌手。そして、ドリューは才能を表に出さずに地味な生活に甘んじる女性を好演している。ただ、彼らにも増して巧さを見せつけたのは、ドリューの姉を演じたクリステン・ジョンストン。かつて大ファンだったヒューを前にして、恥じらいつつも図々しさを見せる中年女性のちょっとした仕草がハマっていた。

80sのポップスを茶化すような設定も、非常によくできていた。楽曲自体がいかにも当時のポップスを思わせるし、衣装やPVの作りなどもいかにも「あるある」なのだ。デュラン・デュランをイメージしていたらしいが、ヒュー・グラントのタレ目がポール・マッカートニーを思わせるあたりももしかすると狙っていたのかもしれない。

「ラブソングができるまで」は、いかにも邦題にありそうなタイトルだが、原題は「Music & Lyrics」で「作曲者/作詞者」という程度の意味だ。作中でドリューが、「第一印象ではメロディが大事だが、曲に深みを与えるのは歌詞」というような発言をしているので、そこまで含めてのタイトルなのだろう。僕自身、楽曲を作るときは歌詞を大切にしていたので、この意味はよく理解できた。