【映画】ROMA/ローマ

Netflixオリジナル作品として、アルフォンソ・キュアロン監督が撮った自身の半生記のような位置づけの本作は、監督賞と撮影賞、外国語映画賞でオスカーを受賞している。時代としては1970年ごろのメキシコを扱っており、舞台となる家族は医師の家庭だが、家政婦を雇って邸宅に住んでいる。コーパスクリスティの虐殺と呼ばれるデモの民衆に対する警察の発砲事件など、当時のメキシコや世界を覆っていた時代の断片を描いている。

ハリウッド作品のように予算をつぎ込むでもなく、日本映画のような絶叫や号泣もなく、淡々と静かに引きの画面で捉えた白黒の映像が美しい。それこそが、アカデミーが撮影賞と監督賞を与えた理由だろう。日本映画が得意な「劇団の芝居調」の対局にあるものと言えるだろう。ストーリーそのものをありのままに伝えるための映像であり、音楽や効果であり、セットであるはずだが、日本の場合は映画にしてもドラマにしてもタイアップを狙ったりすることで、メッセージがぼやけてしまいがちだ。

全編を通じて大きなヤマがあるわけではないが、クライマックスといえるビーチのシーンでは思わず胸が熱くなった。静かな描写ながら、心理を巧みに表しているのだ。サスペンスやファンタジーも好きだが、このような作品こそが映画が本来持つ味わいなのだと思う。