【映画】マダム・フローレンス! 夢見るふたり

この作品の見どころは、自己流で下手くそなのに自分は名歌手と信じて疑わない金持ちマダムの役をメリル・ストリープが見事に演じているところ。ボケた天然老女という設定に、完璧になりきっている。単に表情や台詞回しというだけではなく、メイクや衣装なども含めて狙い通りの世界観を作り上げているところに見応えがある。

主だった役者はメリル・ストリープを含め3人だけ。個性の強い女性に手を焼きながらも付き従うこの手の男性を演じさせたら他を寄せ付けないヒュー・グラント。そして、「ビッグバン・セオリー」ではハワードとして、母親や妻に頭の上がらない男を演じているサイモン・ヘルバーク。もともとピアニストを目指していただけあって、演奏シーンも堂に入ったものだ。コミカルな動きはいかいにもハワードだが、少しだけ上品さを演出しながら、この作品のスパイスになっている。

このストーリーは実話に基づいているというところが意外でもあり、こんな話が実際に起きてしまうところに怖さも感じる。裸の王様と一緒なのだが、誰かが勇気あるいは正義感を持って本当のことを伝えていたら、きっとあっという間に終わってしまう幻想なのだろう。現実世界でも、それが放置されることで取り返しがつかなくなることはよくある。僕の性格からして、そのような場面でつい本当のことを口にしてしまうのだが…