【映画】ベン・イズ・バック

米国の薬物依存症問題に鋭く切り込んだこの作品では、ジュリア・ロバーツルーカス・ヘッジズが演じる母子の愛情が痛々しいほどに描かれる。ジュリアの演技も見応えがあるが、薬物依存症に何度も引き戻されながらも家族への思いを募らせるルーカスの演技には圧倒される。演技力が伴わなければただの説教臭い映画になってしまうところを、見事に救ったと言えるだろう。
米国ではこれだけ薬物依存が問題になりながらも、医療保険に加入できない層の存在や、裏社会のビジネスがシステム化されていることなど、社会の根深い部分には抜本的な手が打たれていない。それはまた、今回の新型コロナウイルスにも通じるものがあって、保険がないから医者に行けず、ウイルスを拡散してしまう社会構造がある。日本の遅れた部分は批判されているが、このような安全が確保されている部分については、好意的な評価をすべきだろう。
タイトルの「ベン・イズ・バック」にはふたつの意味が籠められているが、それがラストで明らかになる展開は読めてしまうとはいえ、後味の悪い作品にならずに済んだという意味ではホッとさせられる。エンターテイメントとしての映画で気分が悪くなってしまうこともあるが、それでは意味がないと思うのだ。