【アカデミー賞】パラサイト強し

前評判では「1917」が一歩出ていた印象だったが、ふたを開けてみれば「パラサイト」の圧勝だった。全体的に地味な印象なのは、Netflixの勢力が拡大してきたからなのかもしれない。派手なスターを売り出すより、演技派やベテランを重用した結果ではないだろうか。「パラサイト」の受賞も、そんな趨勢の隙間を縫った勝利に思えてならない。来年以降もこの流れが続くのかどうか、注目したい。

一番の見所は、序盤の助演男優賞アル・パチーノトム・ハンクス、アンソニー・ホプキンズといった重鎮を差し置いて受賞の栄誉に輝いたブラッド・ピットだった。「パラサイト」の受賞をサンドラ・オーが喜んでいたのも印象に残った。アナ雪2のパフォーマンスでチョイ役をもらった松たか子とメイク・ヘアスタイリング賞を受賞したカズ・ヒロの日本勢に比べて、韓国の得たものは大きかったと言えそうだ。

主演男優賞のホアキン・フェニックスは、「ジョーカー」のあの怪演を踏まえれば当然だが、反社会性を肯定するようなテーマだけに作品賞は有り得なかった。ホアキンもそれを理解していたからこそ、あのお堅いスピーチになったのだろう。何事にもバランスは大事なのだ。それにしてもジョーカーを演じていたときのフェデラー似の表情と、授賞式のホアキンの表情はまったく異なっていた。そこまで含めての演技ということなのだろうか。