【全豪オープン】車いすテニス決勝

上地結衣は落ち着いていた。すでにダブルスで優勝を決めていたことも影響していたように思うが、リードされても焦りの表情は見せず、淡々とプレーを続けていた。逆に対戦相手のファンクォトは自分のプレーにイラつきを見せていた。その対比が、そのまま試合の勝敗につながったということだ。

そして国枝慎吾も続く。同じユニクロをユニフォームスポンサーに持つゴードン・リード相手に序盤はリードを許し、その勢いの違いに国枝には勝てないという雰囲気すら漂っていた。ところが、サイドラインを狙ったショットが決まりだすと形勢は逆転する。勝利へのコミットメントとグランドスラムを何度も勝ってきた自信と経験が、最後にはモノを言った気がする。車いすテニスの特徴である「ツーバウンド」を最大限に活用しながらも、あえてワンバウンドで返す執念がWOWOWの画面からも伝わってきた。

この国枝の勝ち方は、男子シングルスのジョコビッチにも通じるところがある。ティエムにリードを許しながらも、見事なゲームコントロールで立て直してみせた。車いすテニスは通常のテニスに比べて競技人口も少なく、グランドスラムでも8ドロー程度なのだが、それでもワールドクラスのアスリートのレベルの高さは素晴らしい。「障害者ががんばっている」という見方ではなく、純粋にテニスの面白さを教えてくれるプレーが随所に見られた。東京パラリンピックに期待しよう。