【映画】ジョーカー

最近やたら噂になっていたので、気になって映画「ジョーカー」を見た。ストーリーの作り込みは完璧で、ところどころ必然性を疑う展開はあるものの、無駄なプロットはほぼない。ホアキン・フェニックスの鬼気迫る演技も素晴らしく、映画としての完成度は十分に高いと言ってよいだろう。テーマとしては「悪のヒーローを祭り上げたのは、誰もが持っている社会への不満」ということなのだろうが、これを見た人の心に残るのは破壊願望ではないだろうか。

別の視点で言えば、ある意味社会規範に従わないことを正当化しているように見えてしまうということだ。何らかの形で虐げられている人の負のエネルギーは、周囲がそれを作り出したのであって当人の非ではないという論理は、社会秩序を保持するためには非常に危険だ。この作品によって、いきなりフロントグラスを叩き割るような輩を助長するとしたら、映画製作のミッションとは何なのだろうかと疑念を抱かざるを得ない。

TOHOシネマズ上野は満席だったが、全国的にも話題になって多くの人が見ているのだろう。この作品の描く負のエネルギーへの共感が盛り上がっているのだとしたら、今の日本は危機的な状況にあるのかもしれない。この作品が地上波に流れるとしたら、それなりのリスクは想定すべきだろう。