【全豪オープン】スブルチナ―西岡良仁

チェコの20歳を相手に余裕の展開を見せた西岡良仁が、無難なテニスで3回戦に駒を進めた。今回出場した選手の中ではドロー運が良かったように見える西岡だが、それは単なる運ではなくシードを獲得するという、これまでの結果の積み上げによるものだ。ブレークされる場面もあったとはいえ、全体的に危なげない内容で、両手を動かして不満を表明する仕草も西岡にしては控え目だったので、メンタルにも余裕があったのだろう。ナダルを破ったマッケンジーマクドナルドと当たるが、アデレードで勝っている相手だけにかえってやりづらさもあるとは思うが、勝機は十分にある。

ダニエル太郎と綿貫陽介も、それぞれに悪くないテニスをしていたのだが、相手が悪かった。実力的には間違いなく上位の相手に、一歩及ばない形になってしまった。ダニエルは昨季にモデルチェンジにて、前に出て攻める形を取り入れたと思っていたのだが、この日は完全に昔のままの彼。シャポバロフ相手にステイバックして長いラリーに持ち込むものの、勝負どころでのショットの切れが悪く、少しだけ甘くなったところを返されて失点を重ねた。ファーストセット第6ゲームで得た3本のブレークポイントを取り切っていれば、展開は大きく変わっていたことだろう。

綿貫も、コルダ相手に真っ向勝負を挑む。序盤はふたりとも、前日からの雨による試合開始の大幅な遅延からかモチベーションが上がらない様子。最初のゲームでの綿貫のブレークはすぐに返されるが、セカンドセットからは拮抗してくる。デュースを繰り返すゲームも増えたものの、これを取れずに流れを変えられなかったことが残念だ。ただ、彼にとっては、今度につながる自信を得る内容だったのではないだろうか。

今日はダブルスが始まるので、女子にも注目したい。加藤組と穂積組は朝一番の試合で、内島萌夏も登場する。

【北欧ドラマ】捜査官カタリーナ・フス

最初のエピソードでは、まるでアメリカのドラマ「ルーキー」のような設定と演出で、期待値が一気に下がってしまった。しかし、そこはさすがに1話89分の本格派ということで、新人いじめのような「添え物」に走らず、中身で見せてくれるので最後まで一気に見ることができた。新人警官が、母親が警察幹部という利点を生かして、あっという間に刑事から重大犯罪課へと思い通りのキャリアを築いてゆくのはわざとらしいが、スウェ-デンのドラマでは「権威」は忌避される象徴のようなものなので、よくある話なのかもしれない。

基本的には1話完結だが、序盤から中盤にかけて、とあるキャラクターの言動を左右している過去の事実が気になるところ。そのモヤモヤを、最終エピソードでしっかり解明してくれるのはありがたい。「ブラックレイク」では金持ちのバカ息子を演じていたフィリップ・ベルイが、難しい役どころのロバートを巧みに演じているところは必見だ。

ただ、1話90分近いのは苦行のよう。50分代でも長く感じてしまうので、個人的には45~48分程度で終わってくれないと集中が続かない。これは行きつけのコーヒースタンドの店主とも意見が合うところだ。恐らく、編集しようと思えば60分程度には収まりそうな感じだったが、あえてじっくり見せることでクライマックスの展開の重みを表現していたのだろう。

それにしても、北欧系のドラマにはいわゆるイケメンや美女は出てこない。日本のドラマが若手タレントを起用することで話題を狙う風潮とは大違いだ。ドラマは一義的にはドラマを見せるもので、推しの演技を楽しむものではない。

【全豪オープン】ランデルクネク―綿貫陽介

予選2回戦でククシュキンにマッチポイントを凌いでからの大逆転勝ちを収め、ヴァリジャスにも勝ってグランドスラム本戦デビューを果たした綿貫陽介。もともとチャレンジャー大会では好調を維持していただけに、活躍に期待していた。1回戦の相手は、ユナイテッドカップでフランスを背負ったランデルクネク。歯車が嚙み合わないランデルクネクに対し、綿貫が序盤から攻め込んで主導権を握った。

左右のワイドに散らして揺さぶって鋭いパッシングやウイナーでポイントを重ね、ネットプレーもドロップショットも冴えわたる綿貫は、ベテランの試合巧者のようにすら見えた。静かな印象のあるランデルクネクが、終盤にはポイントごとに大きな声を上げていたが、それだけ自分が思うようなテニスができていなかったのだろう。要所で決まるサービスエースも効果的で、綿貫につけ入る隙はなかった。

この日は西岡良仁とダニエル太郎、女子では内島萌夏も登場。内島はセットアップから悔しい逆転負けを喫してしまったが、西岡とダニエルも快勝を収めた。西岡はアデレードでの「職場放棄」から立ち直り、心穏やかにテニスをしてくれたようで、ミカエル・イマー相手に余裕のある戦い。試合後のインタビューでは「負けられないというシードのプレッシャーを感じた」と語っていた西岡だが、そうは思えないほど緩急を織り交ぜた自分のテニスができていた。ダニエルは、エスコベト相手にもったりした展開となったが、深いショットと体重を乗せたダウン・ザ・ラインで局面を打開していた。

2回戦は綿貫がコルダ、ダニエルはシャポバロフと強敵だが、西岡はムナールを破ったスブルチナなので勝ち抜けるチャンスは大きいように思う。セカンドウィークに日本人選手が残ってくれることを願っている。

 

【ドラマ】WITHOUT SIN 罪なき者

硬派な英国ドラマだが、役者の演技に現実味がある。娘を殺害された母親が真実を知るために行動する展開の中、法とか社会常識とかを超越して自身の強い思いで突き動かされる描写が素晴らしい。このようなシチュエーションでは、被害者サイドの思いは当然に強くなるはずだから、「警察が動いてくれない」という不満にもつながりやすいのだろう。その思いを否定することはできないが、個人的には受け容れられない。

真犯人が誰かなのか、視聴者も想像しながら見るわけだが、意図的に特定の人物を怪しげに見せる仕掛けも散りばめられている。そして、最後は想定の範囲にはありながら、「ああ、そう来たか」と思えるようなオチが待っていた。被害者の家族が前を向いて生きていくために加害者と面会するプログラムがこの物語の起点でもあり、そして終点でもある。起きてしまったことの意味を捉えなおして未来に生かすということは、日常生活においてもとても重要なこと。こういったプログラムを活用できるのは、ある程度成熟した社会ならではだろう。

主演のヴィッキー・マクルアの鬼気迫る演技も素晴らしいが、収監されている「加害者」を演じたジョニー・ハリスの存在感と何を考えているか読み取り難いポーカーフェイスぶりが印象に残った。舞台となるノッティンガムも、英国によくある普通の都市という設定なのだと思うが、この物語にはふさわしかったのではないかと思う。

【アデレード国際2】バウティスタ・アグート―クォン・スンウ

クォン・スンウは高速サーブを叩きこんでペースをつかむ。いきなりのブレークで始まったこともあり、あっさりと勝負がついてしまうのではないかという予感が漂う決勝戦は、しかしながらセカンドセットに入ると、バウティスタ・アグートのディフェンスがハマり始める。今度はバウティスタ・アグートが最初のリターンゲームをブレークして優位に立つと、そのまま押し切ってセットオールに戻した。

ファイナルセットもバウティスタ・アグートのブレークで始まるものの、粘るクォン・スンウに2度追いつかれてタイブレークにもつれ込んだ。試合の終盤には長いラリーの連続となる。しかも、ゆったりした展開ではなく、速いショットを打ち分けながらの見応えたっぷりなラリー。それが30本続くケースもあって、目が離せない濃厚な勝負を見せてくれた。ファーストサーブが入らなくなって苦しんだクォン・スンウに対し、効果的なセンターサーブで追いすがっていたバウティスタ・アグートだったが、最後はギアを上げたクォン・スンウがサーブで主導権を握って押し切った。

オンコートインタビューでは、「韓国のファンがテレビを見ているから」と英語に続いて韓国語でもメッセージを送り、満面の笑顔を見せたクォン・スンウ。2年前のヌルスルタン以来のツアー2勝目となった。僕は昨年の楽天オープンでペドロ・マルチネス戦とティアフォー戦の2試合を観戦していて、そのときの印象からクォン・スンウが気になっていたので、この優勝には灌漑深いものがあった。敗れたバウティスタ・アグートも、ディフェンスの強さを示し、時折見せる控えめなガッツポーズと「バモス」の声でも存在感を残した。メルボルンでも、ぜひふたりに活躍してもらいたい。

【POP&STREET 2023】かせきさいだぁ

この時期の恒例となったPOP&STREETは、渋谷〜原宿のギャラリーなど複数のヴェニューで開催されるポップアートのイベント。渋谷のElephant Studioの2階は、かせきさいだぁの睡蓮がゆったりしたスペースに展示されていて、オランジュリー美術館のモネとまではいかないものの、なかなか見応えがあります。

かせきさいだぁの作品は、どれも温かみが感じられて、ちょっと心がくすぐられるような気分になれます。インスタの投稿ば、生活感が満載なんですけどね…