【TOKYO 2020】男子バスケ/日本―スペイン

勝てる相手でないことはわかっていた。残り2試合を含め、1勝できれば素晴らしいというくらいのレベル感だ。対戦相手のスペインは経験豊富なスター軍団。2006年の世界バスケで来日したパウ・ガソルとマルク・ガソルが、いまだにセンターに君臨していたことには驚いた。パウはもう41歳。大ベテランは、しっかり存在感を発揮していた。そして、ルビオもいればエルナンゴメスもいる。日本チームが同じコートで互角にプレーしているだけで感動してしまうような対戦だった。

1Qのラストプレーで富樫がドライブから決めて追い上げ、2Qで一時は同点に追いつく。しかし、ここでスペインのギアが上がり、一気に突き放されてしまった。4Q終盤には日本も八村の3Pやエドワーズの活躍で必死に追いすがり、9点差まで詰めたことは前向きに評価してよいだろう。ディフェンスもそれなりにハマっていたように感じた。

残る2試合はアルゼンチンとスロヴェニアスロヴェニアにはドンチッチが控えているし、アルゼンチンはそのドンチッチにしてやられ背水の状況。1勝が果てしなく遠いようにも思うが、親善試合でフランスを破ったような勢いで押せば活路は開けるかもしれない。馬場や比江島あたりが貢献して、八村ら主軸を休ませる時間をしのいでくれることを期待しよう。

【TOKYO 2020】男子サッカー/日本―メキシコ

余裕と慢心が交錯した、見応えのある試合だった。序盤から全開で仕掛けてきたメキシコに対し、日本は1対1の強さを存分に発揮して応戦。堂安が仕掛けて久保、相馬がPKをもらって堂安と、理想的な形で2点を先制する。ここから反撃に転じたいメキシコは、しかし日本のプレスにしてやられる。ドリブルは止められパスは奪われ、まったく思い通りにならず、ファウルを繰り返す。遠藤のデュエルの強さには定評があるが、他の選手もひけを取らないインテンシティを見せ、メキシコはドツボにはまっているように見えた。

その傾向は68分のバスケス。の退場でさらに強まる。メキシコは直前に3回目の選手交代を済ませており、交代枠1は残っていたもののすでに交代することはできない状況だった。そうなると、メキシコとしては捨て身で来るしかない。そんな中で、負傷明けの三苫と上田を投入し、リハビリモードに入ってしまったのは森保監督の大きな過ちだった。サッカーでは、2-0から1点を返されるとながれが一気に傾いてしまう。この試合でもアルバラドのCKがゴールすると、メキシコがギアをトップに上げてきた。

何とか逃げ切って事なきを得たが、ドローになっていてもおかしくない展開。前田も含め、交代枠があまり攻撃を活性化できていないという事実を踏まえると、ここからの戦いにおいては大きな不安材料だ。中2日の連戦では、サブも含めた総合力が問われる。メキシコ戦では守り切るためのカードを用意していなかったように見えたが、今後は守備の交代にも注意が必要だ。富安の復帰がカギになるかもしれない。

【TOKYO 2020】テニス1回戦

実力だけでなく経験がなせる技だろう。母国東京で開催されたオリンピックの1回戦で結果を残したのは、やはり実績のある選手だった。大坂なおみは最終聖火ランナーでもあり、ローランギャロスでのメンタル発言からの流れを受けて、初戦で負けるわけにはいかない状況だった。しかし、彼女はそんな重圧をストイックに跳ね返して、ジェン・サイサイに完勝を収める。錦織圭も、好調だったルブレフ相手に危なげない勝利。体はキレており、ショットにも自信があふれていたように感じた。

ダブルスの錦織とマクラクラン勉組と土居美咲も残っているが、残念ながらそれ以外の選手たちは早々に姿を消してしまった。率直に言って、ドロー運がなかった。西岡良仁はセットアップからハチャノフに、ダニエル太郎はマッチポイントを握りながらソネゴにそれぞれ逆転される。どちらも簡単には勝てない相手であり、しかも今が旬の選手だった。それ以上に残念だったのが、女子ダブルスの青山修子と柴原瑛菜。ベンチッチとゴルベクという難敵に当たってしまい、堅さの垣間見えるプレーで実力を発揮することができなかった。特に青山は、普段からは想像できないようなミスを繰り返しており、おそらく不完全燃焼だったことだろう。

酷暑の大会で、普段から注文の多いジョコビッチとメドベージェフが時間変更を訴えているが、大坂と錦織はあまり暑がっているようには見えなかった。要は慣れと準備によるところも大きいのだろうということだ。台風の接近を考えれば、晴れている間に試合を消化しておきたいのは当然のところ。これだけの負担の中で開催された大会であることに敬意を持ってくれたら、自分たちの快適さだけを訴えることはないのではないだろうか。

【TOKYO 2020】女子サッカー/日本―英国

完全に力負けだった。個の力も組織力も、そして監督の采配もすべてが完敗だ。前半こそ、DFラインを高く保って何度も仕掛けることができていたのだが、後半は英国のギアチェンジに対応できずにDFラインが下がってしまう。ボールを奪っても前線までが遠いので、長いパスを通そうとすれば網に掛かり、ドリブルで運べば個の力で奪われる。宮川と杉田は奮闘していたのは事実だが、プレッシャーを受けて足元でのミスが相次ぎ、流れをつかむことができなかった。

高倉監督の采配も残念だ。全体が押し込まれて、奪ってもすぐロストし、セカンドボールが拾えない時間帯に、なぜ籾木の投入だったのか。ここは三浦を入れて中盤の奪取力を上げるか、菅澤を入れて前線で張らせるべきだった。結果的に、籾木がボールに絡むシーンはほとんど見られなかった。そして遠藤も前線では空回りし、唯一チャンスを作り出した岩渕は80分の投入。投入した選手をどう使うか、何を変えて何を継続するのか。そんなメッセージ性のない交代は、ビハインドの状況では役に立たない。

失点は不運だったとしか言えない。あの場面でホワイトと競ったのが本職DFの熊谷や南だったら、飛び込んできたホワイトに体を当てるなど違う対応ができたはず。そこにいたのが中島だったということが、誤算だった。かえって誰もいない方が、GK山下はクリアできていたようにも思う。それでも、この試合で最低でも勝ち点1を積み上げなければならなかったのだから、先に失点した場合のプランBをチームが共有できていなかったことは致命的なのだ。

【TOKYO 2020】男子サッカー/日本―南アフリカ

引いた相手に手数を掛けすぎる。それは、ポゼッションとパスワークに強みを持つチームが陥りやすい罠だ。守備重視の南アフリカに対して、スペースが限られた中でも裏を狙う動きがあまり見られなかったことが、展開を難しくした要因のひとつに見えた。そんな中でも林大地は再三仕掛けていたのだが、いかんせんオフサイドにかかり過ぎた。パサーとのタイミングの問題というよりも相手DFラインとの駆け引きの問題で、DFラインを上げられたときにオフサイドエリアに残ってしまうのだ。これは林大地にとって大きな課題なので、その点も踏まえて上田や前田との比較を行うべきだ。

サイドの突破というオプションでは、サイドを抜けても中にDFの人数が揃ってしまい、まったくチャンスを作れない。相手に高さがあればなおさらなので、抜き切らずにアーリークロスという選択肢を想定しておく必要がある。インサイドからのビルドアップは遠藤航と田中碧がしっかりこなしていたので、サイドからのチャンスメイクとFWの駆け引きが次戦に向けた課題となるだろう。

久保のゴールは時間的にも絶妙だったが、やはり最後は個のスキルに依存することがよくわかる。どんなにボールを保持してパスを巧みに回しても、最後に決めるのはチームではなく個人なのだ。それが一番難しいからこそ、サッカーは他のスポーツに比べてロースコアの結果となる。その意味でも、結果を残してくれた久保建英を今日は純粋に称えよう。

それにしても、この試合の主審はレベルが低かった。ファウルの見極めにムラがあり、ダイビングや必要以上の過剰な声やアクションに左右されていた。それ以上に問題が大きかったのはポジショニングで、パスコースに立ちはだかったりセットプレーで重要なエリアに立っていたりと、サッカーをわかっていないのではないかと思うような印象すらあった。ただ、これは八百長とか身びいきということではなく、単純にスキル不足なのだと思う。やたら笛を吹いていたのも、自分が暑さで走り続けるのが辛いから止めたかったのではないだろうか。

【TOKYO 2020】ソフトボール/日本―メキシコ

宇津木監督の継投ミスだった。レジェンド上野は今日が39歳の誕生日ということもあって、完投させて勝利をグラウンド上で見届けさせたかったのだろうとは思う。しかし、7回のマウンドに上がった上野の制球は明らかに乱れていた。思ったようにスナップを利かせられず、先頭打者へのボールが高めにすっぽ抜ける。そんな危険な状況だったにも関わらず、宇津木監督はマウンドに出向いただけで交代させなかった。

その結果として招いたピンチに、センター山田が痛恨の落球。あのフライの処理はグラブを下から持ってゆくべきで、上から被せてしまったがためにエラーになった。同点に追いつかれて、さらにランナーを背負った場面で登場した後藤のピッチングは、しかし「無双」と言ってよいほど神がかっていた。タイブレークでは1点は入るものだという想定が必要だが、無死2・3塁の場面からインコースへの強気の投球で3三振を奪う。日本の攻撃がそうだったように、ランナーを3塁に遅れれば内野ゴロでも点が入るところ、6つのアウトのうち5つを三振という理想的な形で試合をクローズさせた後藤の技術と気迫には敬意を表するしかない。

メキシコのプレーも素晴らしかった。先発オトゥールの緩急をつけた投球も見事だったが、ウルテスのホームランも絵に描いたようなダウンスイングによるもので、基本に忠実なところを見せてくれた。女子サッカーのカナダもそうだったが、チームを盛り上げようとする意識も高く、ストイックな日本とは対照的に見えた。こんなご時世とはいえ、ポジティブなメンタルを持ち続けるには雰囲気づくりも大切だ。

【TOKYO 2020】女子サッカー/日本―カナダ

立ち上がり、カナダは浮足立っていた。パスは収まらず、連携が取れない。しかし、対する日本も同様だったことが悔やまれる。フォトセッションでなでしこJAPANは笑顔も見せていたが、立ち位置が決まらず撮影時間も妙に長い。この時点ですでに異状は感じられた。その中でも普段と違っていたのはGK池田咲紀子。彼女は安定感のあるGKなのだが、明らかに目が泳いでおりプレーに自信が感じられない。初戦のドローは悪くないが、展開を難しくしてしまったのはゲームへの入り方であり、要はメンタルの問題だったのだと思われた。

田中美南のPK失敗も同様だ。小刻みなステップを踏んだ時点で嫌な予感はした。EUROでも、こういうPKをしたキッカーは成功確率が低かったからだ。投入されたばかりで、まだ試合に入り込めていないタイミング。ここまで代表落ちの時期を乗り越え、ようやくたどりついたオリンピックの舞台。静まり返る無観客のスタジアム。そして、相手GKの負傷による不自然に長いインターバルが最後の決め手だった。これは、大分の藤本が失敗した状況に酷似していた。PKキッカーがあらかじめ決められていなかったようなので、それもまた大分の状況と同じだ。ピッチ上の選手たちが強化試合のオーストラリア戦でPKを成功させた岩渕に託せなかったのは先に挙げた事情があるからだが、勝ち点1つ、得失点差1が重要なグループリーグでは重大なミスだろう。高倉監督の直前の体調不良も、影響していたかもしれない。

高倉監督は、遠藤をジョーカーとして使うつもりなのだろう。そうなると、左サイドバックはこの日起用された北村か宮川。北村は前への意識は高いものの、パスミスや相手の寄せでロストする場面が目立ち、最後までプレーさせたことには疑問符がつく。一言で言えば判断が遅いのだが、右サイドの清水の使い方が固まっているのに対し、チームとして左サイドの崩し方は意識が統一できていないのではないだろうか。ポストの使い方と左サイドが、なでしこJAPANの今後の課題となりそうだ。