【MUTUAマドリードOP】錦織圭―ハチャノフ

エストリルオープンを欠場して臨んだマドリードの初戦、錦織はいきなりブレークするもすぐにブレークバックを許し、タイブレークに持ち込んでセットポイントを握りながら取り切れずにファーストセットを落とす。しかし、クレーは得意なサーフェスである上にスロースターターでもある錦織は、ここから焦らずにストローク戦でポイントを重ねて自分のペースに持ち込んだ。

バックハンドのダウン・ザ・ラインがよいタイミングで決まり、ハチャノフのミスもあって流れは完全に錦織。ハチャノフが自分のラケットを拳で殴ってしまい、ガットで指を切って治療に時間を要したことも、ハチャノフがペースを乱してしまった一因となったように見えた。序盤は錦織の方が集中を欠く場面が身についたが、試合が進むにつれて状況が逆転するのも、いつもの錦織らしい展開だった。

2回戦はズベレフが相手なので、早く休んで回復させる必要があるだろう。そして、予選を途中棄権した西岡良仁も、エストリルの決勝で敗れたノリーの棄権で、ラッキールーザーとしてトーナメントに名を連ねた。現時点では1セットアップとリードしているので、このまま何とか逃げ切って欲しいところだ。

【新宿アートウォールプロジェクト】森山大道

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歌舞伎町のミラノ座跡地は工事中ですが、仮囲いにアートを描く新宿アートウォールプロジェクトが展開中です。開発好明のエヴァンゲリオンにちなんだアートもなかぬか見応えがあるけれど、森山大道の写真作品には圧倒されます。宇多田ヒカルを被写体にしたこの写真は、西武新宿駅側の仮囲いに描かれていて、ゾクっとするような雰囲気のある作品。じっくり見るなら、人通りの少ない早朝が一番です。

【大分―清水】クロージングの形

1-0とリードした大分に対して、指宿を投入してチアゴサンタナとのツインタワーに長いフィードを当ててきた清水。三竿も小出も今日は細かいミスが多く、勢いに押されて失点した前節のような終末を予感させるものがあった。しかし、ここでピッチに送り込まれたのはエンリケトレヴィザン。ロングボールを無難に跳ね返し、決定的な場面を作らせないまま無失点でのクロージングをやり切った。ビルドアップがどの程度できるのか未知数ではあるが、「エンヒキ」が大きな戦力となることは間違いなさそうだ。

攻撃ではなかなか長澤に合わせることはできなかったが、町田のゴールの場面でも長澤の存在は効いていた。町田が下りてきてボールを受けるところでフリーになることが多く、これが大分のチャンスメイクの形になっていた。香川がクロスを入れられていないのが気になるが、福森を左で使うよりは安心して見ていられる。渡邊には持たせるのではなく、ゴールに近い位置で思い切りを生かして勝負させたい。

守備は、ポープが安定してきたのが朗報だ。キックの精度には課題があるが、高木の場合は足元の技術があるがために、周囲が安易にGKに下げてしまう傾向があるので、一長一短というところだろう。三竿と小出には不安があるので、エンリケトレヴィザンとペレイラをどう使うかに興味がつのる。

【MUTUAマドリードOP】土居美咲―大坂なおみ

昨年のUSオープンに続いて、またしても初戦でこのふたりが対戦することとなったマドリードオープンは、大坂の最初のサービスゲームを土居がブレークする展開で始まった。土居は序盤から攻めており、この試合に賭ける思いも伝わってくるような勢いが感じられるプレーでサービスエースも3本。ストローク戦でも、サーフェスがクレーということもあって強打で攻めたが、それがかえって大坂のカウンターを食らう要因になってしまったようにも思う。

ファーストセットは土壇場で土居がイーブンに戻したものの、次の第11ゲームで大坂がすぐにブレーク。そのまま押し切った大坂がセカンドセットも危なげなく奪って、ストレートでの勝利を決めた。ただ、ファーストサービスが46%では、苦手のクレーコートでこの先厳しい戦いになりそうだ。ストロークでは深いプレースメントから思い切りよくアングルショットを決める場面もあり、組み立てがうまくできている印象だった。

次戦でムチョバに勝てば、3回戦ではマイアミで敗れたサカーリが待っている。雪辱を果たすにはうってつけの機会なので、まずはこの難敵を倒すことで勢いに乗ってもらいたいところ。そして今夜はダブルスも青山修子/柴原瑛菜組に加え、日比野菜緒と二宮真琴もそれぞれのパートナーと登場する。

【映画】マ・レイニーのブラックボトム

アカデミー賞チャドウィック・ボーズマンが主演男優賞を獲れなかったことに触れたので、この作品を見ないわけにはいかないだろう。ヴィオラ・デイヴィス演じる主人公マ・レイニーの迫力はすさまじく、役作りも相当なものだったのだろうと思う。しかし、大腸がん治療の合間を縫っての撮影だったことを考えると、この陽気でエネルギッシュな演技の意味にあらためて感動せざるを得ない。

チャドウィックといえば「ブラックパンサー」での演技が評価されていたが、あの作品ではかなり抑えた演技だった。ここまでブルースの要素とエンタメ性を前面に押し出した作品でキャラクターを演じ切った実力を、今後見ることができないのはとても残念だ。

作中でチャドウィック演じるコルネット奏者レビィが、死について語る部分がある。黒人として生まれ、成長する過程を語っている部分はBlack Lives Matterの文脈で受け取れるが、死に関する部分はおそらくチャドウィックの思いが籠められていたのではないだろうか。開かない扉を打ち破って飛び出した先に何があったか。それらを一連のメッセージとして捉えることで彼の演技と本作の意味が見えてくるだろう。

【映画】隔たる世界の2人

映画とは言っても30分ほどの短編で、アカデミー賞の短編映画賞を受賞した「隔たる世界の2人(原題:Two Distant Streangers」。奥渋谷のコーヒースタンドThe LATTE Tokyoのエイジさんが「何の事前情報も持たずに見てほしい」とオススメしてくれたのでNetflixで見てみた。もっとコメディ寄りの作品かと思いきや、これでもかというくらいに風刺の効いた内容で、米国の人種問題、いわゆるBlack Lives Matterを扱ったものだった。

同じ場面をタイムループするという設定だが、そこから抜け出そうともがいても結局は別のシナリオが用意されていて同じ運命が待っている主人公のカーター。ジョージ・フロイド事件を思わせる台詞があったり、ジョージを殺害した警察官ショーヴィンに似た雰囲気の警官が登場したり。ブラックコメディというわけでもなく、人種差別問題に関わる主張が淡々と描かれる。押しつけがましくもなく、最後にカーターの決意が示される流れは、感情的になりがちなこの問題を考えるにはよいトーンだったように思う。

カーターの飼い犬の名前が「ジーター」で、ショーヴィンと同じデレクがファーストネームの野球選手にちなんでいたり、銃弾を受けて広がる血の海がアフリカ大陸の形だったりと、仕掛けも多彩だ。あまり堅苦しくならずに人種問題を考えるきっかけを得ることができる、そんな作品だ。その意味では、30分という尺の長さはちょうどよい。

【ルヴァン杯】神戸―大分

リーグ戦によりよいリソースを充てるために、アウェイのノエビアスタジアムに帯同したフィールドプレイヤーは4人だけ。選手交代も最後の最後まで引っ張り、とにかく次の清水戦に備えていることが感じられた。今のチーム状態から見れば当たり前の選択であり、相手が10人であろうとなかろうと結果よりも選手のコンディションを重視した片野坂監督の思い切りには敬意を表したい。

それにしても、やはり個々のスキルは大きく劣る。いい形でボールを奪っても、パスがズレてしまってはどうにもならない。特に井上と屋敷にそれが顕著だった。藤本は周囲を見てフォローがいない状況では倒れてFKをもらっていたが、前回PK謙譲などによる状況判断能力の不足を酷評させてもらったところからは改善が見られた。

エンリケトレヴィザンがようやく起用されたが、ポジションはボランチ。立ち位置は他の選手のポジショニングに近く、ピッチ全体のバランスはあまりよくなかった。ポジション取りのうまくない村上主審だったことも影響しているようにも思うが、本来はストッパーの選手と認識しているので、慣れも不足していたのだろう。正直なところ、今回のメンバーで次につながるプレーができたのは羽田と髙澤くらいだ。高畑は、リーグ戦でも失点の場面でボールがディフレクトすることで相手に優位な状況を作り出してしまっているが、要は下がり過ぎているということに他ならない。