【コミック】続テルマエ・ロマエ (1)

テルマエ・ロマエの終了から10年以上経って、突然書店で見かけた続編が気になって、迷わず購入してしまった。これは相変わらずローマ時代の温泉技師ルシウスが、時空をスリップして日本の温泉にやって来てしまう構成ではあるが、純粋なマンガではなく、1話ごとにライナーノーツのような解説がつけられている。

日本サイドでは弘法大師川端康成が登場し、あたかもマルチバースのように存在したかもしれないような場が設定される。一方のローマは、考証はある程度施されているものの、フィクション要素が強めだ。日本に実在する温泉の魅力を、古代ローマという舞台を借りて解き明かすというコンセプトなのだろう。

秋田の後生掛温泉や鹿児島の妙見石原荘など、その方面に通じていないと聞いたこともないような温泉が登場し、その成分や効能、温泉宿の作りや雰囲気までもが見事に語られる。読者が1巻を読み終わる頃には、温泉旅行に出掛けたい欲求がかなり高まっているはずだ。

そしてマンガのストーリーとしても、「平たい顔属」の妻さつきが去ってしまったルシウスが息子のマリウスを育てながら妻を思う続けるという設定になっており、これからの展開に期待できそうだ。長い構想期間を経ての続編なので、いろいろな仕掛けや伏線がどう収束してゆくのかを楽しみに2巻を待つことにしよう。

【映画】ビューティフル・ゲーム

ホームレスを対象に、4対4で対戦するストリートサッカーのワールドカップを扱った作品で、フィクションだと思って見ていたら、エンドロールに「事実を参考にしている」という説明と資料映像が流れていて驚いた。内容的には完全にコメディなのだが、ホームレス問題のみならず、薬物依存や民族対立なども扱われている上に、ダイバーシティ問題に軸を置く骨太なバックグラウンドを持っている。

サッカーを描く部分は無理のある設定も多いが、主人公のヴィニーがロンドンのサッカークラブであるウェストハムの選手だったということや、米国代表が女子のチームで、この大会での活躍によって大学から推薦入学のオファーを得るということは、かなり現実的だと言える。それらを堅苦しく描くのではなく、あくまでコメディ要素の延長として使っているので、気軽に見ようと思えばあっさりと見終えてしまうだろう。

日本チームは高齢者が多く、サッカーも弱いという設定。しかしこれも、日本のホームレスの実情に沿っている。米国では大学進学前の女子もホームレスになり、イングランドでは若い元プロサッカー選手が職を失っていることとは対照的だ。その意味では、日本の福祉行政に課題があるということを示されたようにも受け取った。

また、国の代表として参加しているはずの大会で、欠場者が出た場合に他のチームから助っ人を加えることが許容されるレギュレーションも興味深い。イングランド代表のクルド人が、対戦相手のイタリア代表にトルクメニスタン出身者が含まれることを理由に出場を拒否することと合わせ、「国家などという境界線に、意味はないんだよ」というメッセージにもなっているのではないか。

エンドロールで日本での様子が描かれる際に「ビッグ・イシュー」のロゴが見える。これはホームレスに販売を委託することで彼らの生活支援をするための雑誌を発行するNPO団体だが、「ダイバーシティ・サッカー」もその活動の一環のようだ。このような活動を通じてホームレスの社会参加に貢献するのは、非常に意義のあること。Netflixがこの映画を配信したことも、そこにつながる活動の一環なのだろう。

【U-23アジアカップ】日本―中国

1点を先制した後、早い時間帯に西尾がレッドカードを受けたことで、日本の課題は明確になった。いかに守り切るか、そして少ないチャンスでカウンターを仕掛けられるか。今の中国相手ということでさほど怖さは感じられなかったが、サッカーでは運と流れで2点くらい簡単に入ってしまうので、その意味の危うさは常にあった。

西尾の退場につながった肘打ちについて軽率だと言うのは簡単だが、大岩監督の性格を考えれば、カンフーサッカーと呼ばれる中国を相手に「気持ちで負けるな」に類する言葉をかけていたことは想像に難くない。ただ、僕が気になったのはカードを受けた後、西尾の表情に悔恨の思いがほとんど見られなかったことだ。リーグ戦が続く中でチームを離れて参加した代表戦で退場し、次の試合も出られない。これがどれほど周囲に迷惑をかけているか、想像が及んでいるようには思えなかったことが残念だ。

その後の日本は、小久保や藤田のようなヨーロッパで経験を積んでいる選手を中心に落ち着いたプレーを見せ、ハイボールの競り合いでミスを犯さなかったし、時間の使い方も絶妙だった。中国の攻撃に迫力がなかったことは事実だが、この形での1-0勝利は結果的に大きな学習効果を発揮するだろう。

いずれにしても、まだ1勝。パリへの道は、この後に続くUAEと韓国という強敵に勝てるかどうかにかかっている。この日はボールが足についていなかった佐藤恵允の巻き返しにも期待したい。

【ドラマ】三体

中国の小説を原作として、英国に舞台を移して製作されたドラマ。科学をベースとしながらも、ゲームの世界もオーバーラップするなどフィクション要素も強いので、全体的に我田引水的な展開になっている。三連星を拠点とする三体星人が地球を移住先として狙っているが、地球に到達するのは400年先という点が重要なポイントだ。

地球に生活する人たちに投げかけられる選択肢は、400年後の危機に備えるべきか、あるいは足元の生活が優先なのかということ。これはつまり、地球温暖化を含む気候変動や資源の枯渇、人口増加による食料不足など現実に起きている事象の一類型に過ぎないということだ。同時に、企業が当たり前に直面する「今期の利益か、持続的な成長か」という選択肢にも通じる問題と言える。

本作の中でも宗教のような位置づけで対立が描かれるが、どちらを選択するかは価値観の違いに他ならないので、宗教のように「信じるか信じないか」という違いでしかない。ふぉちらにも合理性があるし、本来の政治や企業経営は両者の間でバランスを取りながら判断するものであって、決して「イチかゼロか」ということではないのだ。

俳優陣で気になったのは、「ドクター・ストレンジ」などのマーベル作品でウォンを演じるベネディクト・ウォンが捜査官ダーシーを演じていること。存在感は独特ながら、コミカルな要素を排しているところが新鮮だ。最終話では「シリコンバレー」のビッグヘッド役のジョシュ・ブレナーとの絡みもあって、僕にとっては意外性もあり、興味深かった。また「FBI:特別捜査班」で分析官エリースを演じるヴェデット・リムは、重要な役どころながら出番は多くないことが残念だった。

ここからの展開が面白くなりそうなところでシーズンが終わってしまったので、シーズン2への期待も高まっている。

【千葉―大分】前向きな勝ち点1

今の選手層、今のコンディションでは、この結果を悲観することはない。むしろ、よくドローに持ち込めたと評価した方がよさそうだ。片野坂監督が宣言していたほどには新しい要素が感じられないカタノサッカー2.0は、結局のところ攻め手がないことを「ビルドアップ」と呼んでいるようにしか見えない。前半をディフェンシブにスコアレスを狙い、後半勝負も相変わらずだ。

ボールが収まる選手が長沢と野村しかいない中で、年齢とコンディションから彼らを90分フルには使えない。流れを変えるタイプではない渡邉を最初から使って、後半にギアを上げるスタイルは理解できないわけではない。しかしながら、伊佐と宇津元が機能しているようには見えないし、左サイドの香川は左足でパスを出すコースがないと中に戻してしまうばかりで、宇津元とのコンビネーションがまったくない状態なのだ。

一方右サイドも、松尾はチャンスメイクよりも逆サイドからの仕掛けに詰める形で輝く選手。野嶽も攻撃にはほとんど絡めず、昨季にインサイドで起用されて見せつけた器用さやゴールを狙う狡猾さが活きていない。もちろん、相手チームにはスカウティングされているだろうから、相手の出方を見てピッチ上で修正すべきなのだが、そこまで求めるのは酷な布陣だということでもある。

後半に見せた形でキックオフから戦えれば、かなり状況は良くなるはず。その予感を持てたことが、今節を前向きに評価する要因だ。今季の後半から来季にかけて、カタノサッカー2.0の真価を問うことになるだろう。

【ビリージーンキングカップ】日本―カザフスタン

杉山キャプテン率いる日本チームは、カザフスタン有明コロシアムで対戦。カザフスタンはリバキナが来ておらず、一方の日本は大坂なおみが4年ぶりに参戦ということで、試合前から日本の優位は明らかに見えた。

Rubber-1は日比野菜緒とダニリナ。ダニリナはダブルスプレイヤーで、WTAのシングルスランキングは939位。ただ、男女ともに国別対抗戦においては、資金や家族などの諸事情でふだんツアーを回れない選手が「隠し玉」のように起用されることがあるので、油断はできない。

始まってみれば、日比野が一方的に仕掛け、押す展開に。実力差のせいか、いつもよりのびのびと自分のテニスができており、コースの打ち分けや回転もいろいろと試す感じで、それがうまく回っていた。実のところ僕はこの日、会議が終わったら有明に向かおうかと考えていたのだが、試合の進行が速く、会議も長引いたので、早々に断念して帰宅後のWOWOWオンデマンド観戦に切り替えたのだった。それくらいに、一方的な試合だった。

続くRubber-2は大坂なおみがプティンセバと対戦。これまでのH2Hは大坂の1勝3敗と、分の悪い相手だ。大坂はファーストサーブの確率が決して高いわけではないながら、エースを次々と決める。パワフルなテニスの印象ではあったが、プレースメントも絶妙で、ワイドぎりぎりを狙ったショットや相手を押し込む深いショットが効果的だった。悪い時のなおみちゃんは、ネットに掛けてしまうことが増えるのだが、この日はほとんどそれが見られなかった。

僕が何よりもうれしかったのは、試合後のオンコートインタビューで大坂が自然な笑顔になっていたこと。そして杉山さんがそれをうまく引き出しているように感じられたことだ。日本語が苦手なこともあって選手間のコミュニケーションにも苦労しがちな彼女を温かくサポートし、試合中も余計な指示をするのではなく最低限のメンタルコントロールに徹していたように見えた。大坂にとっては、この上ない環境だったはずだ。

初日を終えて日本が2勝。土曜日は3列目という良い席での生観戦なのだが、日比野がプティンセバに勝ってしまうと日本の勝ち抜けが決まり、なおみちゃんの試合がなくなってしまうことが最大の懸念だった。

そして土曜日のRubber-3は、日比野とプティンセバの対決。この試合はとにかく激しい闘志がぶつかり合い、テニスの内容も非常に高いものだった。日比野が勝てば大坂の試合がなくなり、負けて大坂が勝てばアオシバのダブルスが見られなくなる。そんな複雑な気持ちが当初はあったが、そんなことはどうでもよくなり、とにかくここまでがんばっている日比野に勝たせてあげたいという気持ちが強まった。

ラリーでも、お互いすべてのショットに遊びがなく、常に攻め続ける。プティンセバがしつこく日比野のフォアサイドを攻めれば、日比野は狭いサイドにダウン・ザ・ライン。普段は礼儀正しい振る舞いと、ポイントを落としたときに両足を揃えてちょこんと跳ぶ仕草が記憶に残る日比野だが、この日は叫ぶ、吠える。「おらぁ」とも「うりゃあ」とも表せそうな声を発して、一歩も譲らなかった。

ファイナルセットの第3ゲームを競り合いながらブレークしたプティンセバがメンタル面でも優位に立ったように見えたが、次のゲームで、これまで決まっていたドロップショットを日比野が拾って流れが変わる。タイブレークではマッチポイント4本を凌いだ日比野が一気にひっくり返して勝利をつかんだ。

大坂の試合は見られなかったが、開始前にコートで練習する彼女をコートエンドの3列目で見られたので、まあよしとしよう。

デッドラバーとして行われたダブルスは、競った展開で見応えはあったが、アオシバは細かいミスが多くマッチタイブレークで終盤に追いつきながら振り切られてしまった。青山はセカンドサービスのレットが目立ったが、時折見せる鋭いサーブには、まだまだ成長を続けている様子も窺えた。

最後のオンコートインタビューでは、選手5人と杉山キャプテンが仲間と観客に感謝を伝えた。その様子を見ているだけでも、杉山愛さんが選手のモチベーションを引き出し、チームに一体感をもたらしたことがよくわかる。組織を活性化させるポイントがここにあることを、あらためて認識させてもらった。やはり、よいチームは仲が良く、同じビジョンを描いているのだ。

【桜便り】音無親水公園の夜桜

ソメイヨシノの季節は早々に終わりつつあり、八重桜が少しずつ花を咲かせています。この画像は先週の音無親水公園。飛鳥山公園の花見でにぎわう王子駅の裏側にあって、地元民以外にはあまり知られていない穴場です。

夜にはライトアップもされていて、なかなか幻想的。カメラ好きな知り合いにオススメすると、たいてい満足して喜んでもらえるスポットなのです。京浜東北線王子駅東京メトロとは反対側に出ると、すぐに見つかるはずですよ。

この時期、近くのスーパーは花見の買い出し客で大混雑するので、それを避けてあえて遠くのお店まで買い物に出掛けるのはちょっと面倒でもありますけどね…